ご挨拶
社会福祉法人 名張育成会
理事長 市川 知惠子
昭和33年10月1日、社会福祉法人名張育成会の源となる「名張育成園児童寮」が多くの方々の思いの結集として開園いたしました。
「名張育成園児童寮」は「社団法人全国精神薄弱者育成会(現・社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会)」が知的障害のあるわが子を思う親たちの願いのもとに、まだ法制度化されていなかった18歳以上の自立支援も行う、日本初の児童・成人一貫施設として開設されました。紆余曲折の中、親の願いを結実させた「名張育成園児童寮」の開設は法律整備の動きを促進させ、その2年後に「精神薄弱者福祉法」が制定、翌年には認可施設となり、念願であった成人への自立支援の道を切り開くことになりました。
昭和48年、全国に成人施設が整備されたことから、三重県での役割に特化する意味合いで現法人に財産等事業が移管されました。平成7年には、地域に密着した法人となるべく「社会福祉法人名張育成会」へと法人名を変更し現在に至っています。
名張育成会の支援の精神的支柱は、最初から今日に至るまで知的障害児、知的障害者の人達から学び、更には後に着手した精神障害者の支援によって深められてきました。そのどちらも、社会の無理解に苦しみ、その権利を阻害されていたこと、地域で生まれ育ち、学び働くことができにくかった歴史的事実をもちます。そのことが「人の尊厳とは何か」「支援するとは何か」「対等とはなにか」「障害とは何か」ということを、私たちにすこしずつ教え、さとらせてくれたと考えています。
彼らに向き合うことは、私たちに深く考えることをさせ、人の脆弱性、それを抱えながら生きる困難さや健気さ、そしてそれゆえに表す様々な行動について思いを馳せさせ、人全体に対する理解と暖かなまなざしの不可欠なことに気づかせてくれました。私たしの支援の出発と中心に障害のある人達がいたこと、これは今後も変わらないし、私たちは彼らから学び続けていくのだと思っております。障害のある当事者の方々から多くのことを学び時には許されてきたことに、敬意と感謝をささげたいと思います。
さいごに、厳しい時代に実践を積み上げられてこられた先覚、それを見守り、その時々の形や在り様でご支援いただいた行政機関の方々、そして何よりも私たちに支援を惜しまずに支え続けて頂いている家族の方々、地域の方々、すべての方々に深い感謝をささげながら、誰もが自分らしく生きる社会を目指して、職員が心をあわせて歩みを進めたいと思っております。どうぞ、今後ともよろしくお願い申し上げます。